バランス型?特化型?
ポートフォリオという言葉をご存知だろうか。
英語では、書類を運ぶ平らなケースという意味(Wikipediaによる)だそうだが、もっとも思い浮かぶのは投資用語としてではないだろうか。
相場の変動リスクを抑え、安定的に運用するために、いくつかの金融商品を組み合わせることを意味している。
ここでは、不確実なリスクにおけるマイナス影響を最小化すること、
そうは言ってもチャンスがあれば利益を得たいというプラス影響を享受すること、この両面のねらいがある。
性質の異なるものを組み合わせることで安定する、というのは普遍的な法則だ。
サッカーでは、チーム編成にあたっては異なる特長を持つプレイヤーを組み合わせ、それぞれに適したポジションに配置する。基本は攻守のバランス・連動性である。
食事では、三大栄養素であるタンパク質、脂質、炭水化物、を含むものを組み合わせて栄養バランスのよい献立を立てる。
極端に攻撃型のチームは、守勢に回った時はもろいし、長期間を戦うリーグ戦では成績が安定しないことが多い。(ただし、個人的には、川崎フロンターレのようなチームは観ていて楽しいから好みなのだが)
偏った食事は、気候の変化で体調を崩しやすいし、体質的にも強くならない。
短期的な目的のために、意図を持って偏りを作ることはあるかもしれない。
しかし、長期に安定した持続的な状態であろうとすれば、ポートフォリオを必ず意識する必要がある。
キャリアにもポートフォリオを持とう
私は、このことはキャリアにおいても同様だと考える。それが「キャリア・ポートフォリオ」である。
この考え方は、投資先を分散させ長期の安定運用を目指すように、個人のキャリアも複数の仕事やフィールドを持とうというものだ。
キャリア教育の中でよく言われるのは、先々の目指す姿を定め、そのために経験すべき仕事とそれが可能な会社を選択するというものだろう。
いわゆる「キャリアプラン」を立て、プランに沿って自分のキャリアを歩んでいこうという考え方だ。
目標を定めてそれに向かって行動するという考え方自体は賛成する。しかし、多くの場合は事前に得られる経験や気づきがそれほど明確にイメージできている事はなく、やってみて初めて分かることも多い。
また、仕事に就いて疑問や不安を感じたとしても、短期でいくつも仕事を変更することは難しい。転職回数が多いことはネガティブな印象を持たれがちだ。
事業や職種によっては習熟するまでに長期間を必要とすることも多いだろう。
自分のキャリア・ポートフォリオの描き方
そこで、自分の「キャリアポートフォリオ」を組み立ててみることをお勧めしたい。
- 長期のキャリアプランにこだわらず、その時々に関心を持ったテーマの活動に参加する(特に社外の活動)
- いくつかの柱となる活動を定め、大まかなパワー配分を決める
- 定期的にその活動への自分の関心、当初の目的をふり返り、継続参加するかどうか見直す
というのが基本的な流れだ。
参加する活動は、現在の仕事の領域とは遠いほど、関係性が薄いほどよい。
この段階で、仕事にも役立つから、とか、会社から活動費がでそうだから、といった下心を出してはいけない。
一見関係ないように見えるところに、大きな気づきや一生を左右するような出会いが待っている。
異質なコミュニティに身を置いてみることは、自分の特徴を再認識することにもつながる。
自分が当たり前と思っていたことがまったく異なることもよくあることだ。わが家の常識は世間の非常識だ。
こうした小さな変化への慣れが、いずれ大きな選択や環境変化に直面したときにサバイブする力を養うのだ。
ぜひ、キャリアポートフォリオの考え方をあなたのキャリア・デザインにも取り入れていただき、彩り豊かなキャリアを歩んでいってほしい。
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