食べものはどこからやってくる?

Vegetables最近は、顔が見える食べ物があたり前になってきている。
スーパーに行くと、”○○さんの大根”といった生産者の名前とかお写真がついた野菜は普通に売られているし、産地のことを紹介したメディアや店頭POPなども工夫が凝らされている。

消費者の食の安全への意識も高まっている。
とりわけ東日本大震災の原発事故の後は、産地や放射線量の検査結果なども気にする人が増えた。販売側もできる限り安全であることを伝え、安心して買ってもらえるように努力を重ねている。

一方で事故も多い。異物の混入や産地の偽装といった故意・過失の違いや程度の差はあれ連日のように報道されている。事故を起こせば徹底的に叩かれるし、食を担う企業には相応の責任があることも確かだ。

自分やその家族が口にする食べものが、どこから来たのか、誰が関わって、どんな加工をされたものなのか、どうやって手元に届いたのか、それは安全なのか、といった食に対する様々な疑問や不安に答えるために起きていることである。

 

生産者と消費者は”遠距離化”している

しかし、ふと思うことがある。消費者である自分には問題はないのかと。根本的には食を作り届けることの全てを生産者や企業に委ねてしまったことに問題はないのだろうか?作る人、消費する人という関係が固定化されたものになったのはいつからだろうか?

農村中心だったかつての日本社会では、多くの人が作ることやそれを加工することが日常の仕事だった。そして自分が作っていないものは、ご近所からいただいたり、お礼に自分の作ったものをあげたりという、物々交換も行われていた。一人ひとりが作り手であり同時に消費者でもあったし、また、顔が見える関係の中で素性の明らかな食べものが巡っていた。そこには、基本的にお金を介した売買ではない形の流通であり経済が存在していたのだと思う。

しかし、現在は食べものはお金で購入するものになった。スーパーに行けばほとんどの食材や調理された惣菜も並んでいるし、飲食店も次々に新しいジャンルが生まれ競い合っている。最近は産地や食材にこだわっている店も増えたが、産地や生産者とは相変わらず距離があるし直接訪れる訳ではない。やはり体験を伴った実感値がないと、生産や加工のことは間接情報の域を出ることはない。

消費者のままでいることを選んでもよい。しかし、食べ物が作られる現場を知らず、加工や流通の過程を知らずして、本当に安心して食べることなど出来るだろうか?

食の遠距離化

 

消費者が6次化しよう

「農業や漁業の6次産業化」といった話題は、昨今の地方創生の文脈からもより頻繁に耳に入るようになった。だが、ここで言いたいのは”消費者の”6次化の話だ。6次産業化にならって、消費者側が、生産(1次)✕加工(2次)✕流通・販売(3次)に関わってみようというコンセプトである。

生産は、文字通り食べものを作るということだ。
市民農園を借りて野菜を作ってみたい、米作りの手伝いに行ってみてもいい。家庭でもプランターなどで野菜をつくる、フードニングという手もある。身の回りで少しの時間から関わってみる方法はいくらでもある。

加工は、食材にひと手間かけてみることだ。
最も身近なのは、家庭で料理をするということ。外食がちだったり出来合いの惣菜や出前を使うことが多い人は、そのうち1回でも自宅のキッチンで料理をしてみる。漬物などの保存の効くものを作ってみるのもよいし、興味がわいたら味噌作りや豆腐作りにチャレンジするのもよいし、皆で一緒にできるワークショップも開催されている。

流通・販売は、交換やあげる・もらうことも含んでよい。
素人が作ったものを販売するとなると色々な意味でハードルが高い。
しかし、食べものが巡るという視点で考えてみれば、ご近所や友人と交換するのも立派な流通だ。
食材や料理の種類でテーマを決めて持ち寄りパーティをするのも楽しいし、地元の加工場などに子どもと見学に行くのもよいだろう。

消費者の6次化

 

 一貫して関わることで食の流れがわかる

どれも個別には既に行われているものばかりだが、プロセスに一貫して関わることや食のつながりとして意識されていることは意外に少ないように思う。例えば、畑で大豆を育て(生産)、それを材料に豆腐をつくり(加工)、豆腐レシピ料理の持ち寄りパーティやご近所へおすそ分けする(流通)といった、食材から一貫した形でつながっていることが望ましい。

但し、最初は興味がわいたところから関わってみるのがよいし、できる部分から生活の一部に取り入れるのが無理がない。家庭で作ること、農園で作ること、たまに産地を訪れてみること、現地の人と交流すること、知ること、応援すること、小さなことからできることはたくさんある。

なにより楽しく、美味しいし、家庭の自給率が上がることで家計も助かる。やってみよう!